「みんなと同じことができない」──子どもがそう感じ始めたとき、親は何を手渡せるだろう。
気管切開と胃ろうのある娘を育てています。娘がどういう成長を遂げるかは未知数だけれど、自分の努力ではどうしようもないハードルを抱える可能性もある。そんなとき、どうしてあげられるのか。垣内俊哉さんの『10歳から知りたいバリアバリュー思考 自分の強みの見つけかた』は、子ども自身が読める形で、その手がかりをくれる一冊だと思います。
どんな本?──「バリアバリュー」という考え方
著者の垣内俊哉さんは、骨形成不全症で小学生の頃から車椅子で生活し、大学在学中にユニバーサルデザインの会社「ミライロ」を立ち上げた方。掲げているのが 「バリアバリュー=障害を価値に変える」 という理念です。
バリアフリー(障害を“なくす・避ける”)ではなく、その特性そのものを強み(バリュー)として活かす。本書は、その発想を10歳の子どもにも届く言葉でほどいていきます。日本を100人の村にたとえれば障害のある人はおよそ8人──、「違い」がむしろ当たり前の風景として置かれるのが印象的でした。
「あのアプリの会社だったのか」──ミライロIDのこと
実は私、著者の名前より先に、この会社のプロダクトに助けられていました。ミライロID──障害者手帳をスマホで提示できるアプリです。窓口で手帳を出す手間が省けて、「便利だな」と思って使っていた。
てっきり公的なアプリだと思っていたのですが、調べてみると民間の株式会社ミライロが作ったもので、しかもそれがこの本の著者の会社でした。障害を“価値に変える”という理念を、本の言葉だけでなく、実際に私たちの生活を軽くするプロダクトにしている。そのことを知って、本の説得力が一段変わりました。
先日も娘を連れて家族旅行にいったのですが、チケット売り場でミライロIDが使えました。便利!
響いたこと
実は普通の人なんて存在しないんですね。それぞれ人には個性があって当たり前だし、それぞれの特徴を強みにして、同じようなことで悩んでいたり、そんな誰かの助けになったりして生きていける。
子どものうちにこの感覚に触れられたら、救われる子も多いんじゃないでしょうか。弱みを克服して普通に近づくのではなく、その特性のまま、誰かの役に立てる場所がある──娘にも、いつかその向きの言葉を手渡したいと思っています。
こんな人におすすめ
- 子どもが「みんなと同じにできない」と感じ始めている
- 障害や特性を、本人にどう言葉で伝えるか迷っている
- きょうだい児にも当事者本人にも読める本を探している
- 大人が“多様性”をきれいごとで終わらせたくない
家庭で・大人が読むときの視点
「10歳から」とあるとおり総ルビ・平易で、子どもひとりでも読めます。おすすめは、親が先に読んでから、子どもに手渡す/一緒に読むこと。学校の先生や支援者が言葉の引き出しを増やすのにも向いていると思います。
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